目覚めた時のクセ

 他の人もやっているかどうか分からないが、自分は目をつぶったまま目覚めた時、あえて目を開けずに周囲の状況を認識しようとするクセがある。例えば、今、体を左に向けているから目を開けたらいつもの寝室の壁ば目に映るんだろうなぁ、いや、待てよ、寝具の感じがいつもと違う、ベッドに寝てる。そうか、昨日は出張でビジネスホテルに泊まったんだ。だったら目を開けたらホテルの部屋の中だ。みたいな感じ。

 その日も、目をつぶったまま覚醒したのであえて目を開けずに周囲の認識を始めた。

 ああ、コタツでうたたねしてしまったんだ。目を開けるとコタツの山がそびえ立っているんだろう。コタツの上にはみかんとお菓子が載っていたはず。冬休みはお母さんがお菓子をたくさん買ってくれるのでうれしいなぁ。今何時だろう?そろそろ日本昔話が始まる頃かな?

 と、ここまで考えた後で、自分はもう子供ではなく、いつもの寝室で寝ていた事に気が付いた。

 懐かしくてさみしい気分になった。そして、もしあのまま子供の頃に戻っていたら、などと考えてみた。自分より若い両親は自分の目にどう映るのだろうか?子供の体に戻ったら身軽なんだろうか?眼鏡無しでもなんでも見えるんだろうなぁ。

 昔はあの頃に戻ってやり直せたらな、とよく考えていた。もっとちゃんと勉強して今よりもっとましな人生にできるのではないか、と。しかし、最近はそんな事を考えなくなった。生き物は自分が快適になる方に向かって行動する、と言うルールで生きている。自分も今までそのルールで生きてきたはずなのだから、もし人生をやり直したとしても結局、今までと同じような生き方をしてしまい、同じような人生になるに違いない。

 仮に、今までより頑張れたとしても、今よりひどい事になるかもしれない。いい会社に入って働きすぎて体を壊す、とか。収入目当てで寄ってきた人と結婚してギスギスした家庭環境に置かれる、とか。

 うん、今のままでいいや。