先日、鑑賞した「テラシビアにかける橋」。
途中まではまあまあ面白かったのに途中で「?」となり、すっきりできない終わり方をした。
制作者は何を思ってこの映画をつくったのか?
こんな映画でもそれっぽく感想文を書けるものなのか試したくなった。
【あらすじ(ネタバレ)】
主人公の少年ジェス。
家庭は貧しく、父親は厳しい。
学校では同じクラスに、いじめをしてくる男子生徒二人。
学校には番長的存在の8年生の女。
担任の初老の教師はいつもガミガミ。
唯一憧れを抱いている音楽担当教師以外はジェスにとって鬱陶しいだけの存在。
冴えない表情で暮らしていたある日、隣に小説家の一家が引っ越してきて、そこの娘レスリーと仲良くなる。
レスリーは行動的で番長的存在にも怯む事無く向かっていくなど卑屈なジェスとは正反対の性格だった。
二人は小川の中央付近に垂れ下がっているロープを使って向こうに渡り、二人だけの場所を作り、日々、ファンタジックな空想に耽っていた。
空想の内容は、ここはテルシビアの王国で自分は王様、しかし、悪者の動物や木の巨人などが襲ってきてくるのでトンボの兵隊と一緒に戦ったりする、と言うもの。
そんな日々を過ごすうちにジェスは少しずつ笑顔が増え、明るい性格になっていった。
ある日、少年ジェスが絵を描く事が得意なのを知った音楽担当教師が美術館へ連れて行ってくれる。
楽しい時間を過ごしたが、帰ってみるとレスリーが川を渡ろうとして落ちて頭を打って死んでしまっていた。
悲しみに暮れるジェスに周囲は優しかった。(空気の読めない、いじめっ子の二人は除く)
二人だけの場所に行けばレスリーに逢えるのではないかと足を運ぶ。
レスリーが事故に遭った際にロープが途中から切れてなくなっていたが代わりに倒木が橋のようになっていた。
倒木を渡り、レスリーを探すジェス。
レスリーの助けを求める声が聞こえた、と思ったら後から付いてきた妹が倒木でできた橋の上で川に落ちそうになっていた。
妹を助け、「二人だけの場所だから来るな!」と突き放した。
再びレスリーを探すが黒い影が襲ってきたので逃げるが追いつかれてしまう。
黒い影は父親だった。
父親はジェスに「ここでレスリーから大切なものをもらったのだろう、それを大切にしていればレスリーはお前の中にいる」と言って抱きしめる。
ジェスは倒木を撤去し、手作りの橋を造った。
そこに妹を招待し、空想の王国を二人で眺める。
【正直な感想】
えー、じょじょに打ち解けてすっかり仲良しになったレスリーを殺す事ないじゃん。ファンタジックな空想する系の映画なんだからハッピーエンドでいいじゃないか!
学校でもいじめられて、家でも虐げられていたんだから、終わりはみんなと仲良くなる、もしくは、みんなをぎゃふんと言わせる、の二択だろう。
ロープが切れた場所になんでいきなり倒木の橋が架かってるんだ?妹を危ない目に遭わせるために都合よく倒れた訳ね。
今までわき役だった妹が最後に主役級の扱いになってエンディングって不自然だよな。
今までレスリーとの友情をテーマに話を進めてきて、最後に兄弟愛で終わるって。。。
【それっぽい感想】
主人公ジェスは恵まれない環境のなかで屈折した日々を送っていたが、逃げてばかりのジェスとは正反対の隣に引っ越してきたレスリーと過ごす内に変わっていったのだと思う。
最後に父親が言った「ここでレスリーから大切なものをもらったのだろう、それを大切にしていればレスリーはお前の中にいる」との発言がそれを裏付けている。
レスリーの死後、周囲の人々がジェスに優しくなったのは親友を失ったジェスを憐れんでの事だけではないだろう。もともと周囲の人々はそんなにひどい人達だった訳ではなく、屈折したジェスから見てそう映っていただけの事だったのではないか。レスリーと出会う事によって内側しか見てこなかったジェスが周囲に目を向けられるように変わったと言う事ではないかと思う。
父親からの言葉でそれをはっきりと自覚したジェスが橋を作って妹を二人だけの場所に招待した。
これはいままでいっしょに学校に連れていったりしなければいけない鬱陶しいだけの存在だった妹もジェス自身が変わった事により、大切な家族だと思えるようになったからではないだろうか。
そして、招待した王国では大勢の王国の住民が出迎えてくれる。
今までの空想では王国はあったものの動物や虫はいるが、人は全くいなかったのとは対照的だ。
これも、いままで周囲の人々に関心を持たなかったジェスが変わった事を暗に表現しているものではないだろうか。
つまり、この映画は一人の少女と出会って変わる事ができた少年のお話、だったのだろう。
それっぽい事を書こうと思って書いてみたが、書いてみると「それっぽい事」ではなく、これこそ制作者が言いたかった事に違いない、と思えてくるから不思議だ。
でもやっぱりそんな事、レスリーを殺してまで言わなくてもいいじゃないか、と思った。