捨てるための修理

 娘の部屋に何年も飾られていたUFOキャッチャーのおもちゃがあった。
 かなり昔に誕生日かクリスマスのプレゼントで贈ったものだ。
 部屋を片付ける時、これを処分する気になったらしい。
 ふと見ると部屋の片づけそっちのけでUFOキャッチャーをいじくりまわしている。
 聞くと、買ってもらって数回遊んだだけで壊れてしまっていたので捨てる前にダメもとで修理を試みていると言う。
 知らなかった。
 買ってもらってすぐ壊れてしまったのならさぞがっかりした事だろう。
 その時、私に壊れたと言って来なかったのはなぜだろう?怒られるとでも思ったのだろうか?
 そんな事を考えたらちょっと切ない気持ちになった。
 そんな切ない思い出に踏ん切りをつけてお別れさせてあげようと修理を買って出る事にした。
 分解してみるとUFOキャッチャーの構造はシンプルでチープなつくりだった。コスト削減に向けた設計、よく考えられてるなぁと感心する。
 しかし、これだけチープだとやはり数回使って動かなくなるのも無理はないかな、とも思った。
 分解してみたが特に壊れている部分はなかった。ギア部に充填されたグリスのせいでそこらじゅうべとべとになった。(そんな訳で途中の画像はない)
 動かない部分のギアを全部外してもう一度組み立ててその部分だけ動かしてみるとちゃんと動くようになった。
 動かない部分のギアもそうだが、どの部分のギアも下のケースの溝に置いて、上のケースをかぶせると固定される構造なのだが、上下のケースを重ね合わせる時、下のケースを垂直にしなければいけないのでその時ギアがぽろっと落ちてしまいイライラする。
 苦労して組み立て直して動作確認。正常に動作する事を確認した。しばし達成感に浸る。
 娘に見せたら喜んでくれたがその後、部屋に置かれたまま使われた形跡はない。
 センチメンタルな気分に浸っていたのはどうやら私一人だけだったようだ。
 そして、直ってしまったUFOキャッチャーが捨てられるのか否かはまだ分からない。(修理して直ってみると捨てるのがちょっと惜しい気分になっている、自分のモノじゃないけど)
 

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