去りゆく夏

 車から出ると湿気がまとわりつく。

 空を見上げると作り物のような雲が夕日を浴びて光っていた。

 どこかの家の夕食のにおい、風呂場の換気扇からシャンプーのにおい。

 一瞬の風にかすかな涼しさを感じた。

 居座っていた夏が立ち去ろうとして腰を上げたような気がした。