ある晴れた午後の事でございます。
私が食事を終えてファミレスの駐車場で車に乗り込んだ時、隣の駐車スペースに中年のご婦人が、車をバックで駐車させようとしているのに気が付いたのでございます。
ご婦人は窓を開け、少し身を乗り出し、後ろを見ながら慎重に車を動かしておりました。
ふと気が付くとご婦人は何やらつぶやいているご様子でございました。
聞くとは無しに聞いておりますと、ご婦人は
「大丈夫、きっと大丈夫、全てうまく行く」と呪文のように繰り返しておりました。
私はシートベルトを締めながら、駐車場入り口にある立て看板の
「前向き駐車をお願いします」の文字と、ご婦人とを交互に眺めながら、どうしたものかと、思案にくれた次第でございます。